今年度は、3月の約一ヶ月間、中華人民共和国で調査を行った。前半は福建省戴雲山および武夷山において、サンショウウオ属Hynobiusとフトリモリ属Pachytritonの生息調査を行った。サンショウウオ属については、両地域から、ほぼ一世紀前の生息記録および標本が残されている。今回訪れた場所は近年まで生息が確認されていたが、確認することができなかった。いずれもかつて繁殖を行っていた窪地が乾燥して干上がっていたことが原因と考えられた。フトリモリ属は、フトイモリを両地域で採集することができた。これまでの遺伝的な調査から、両地域の個体群は別の系統に属していることが明らかになっており、今後更に詳しく解析ができるようになった。調査の後半は重慶市の東部および南部で行った。ニセサンショウウオ属Pseudohynobiusw 2地点で採集したが、その1つの南部の産地はこれまで知られていない初報告のものであった。現在本属からは毎年のように新種が記載されており、今回得られた標本も詳しく調査する必要がある。また、南部の他の産地より、コブイモリ属Paramesotritonの水生種を採集することができた。形態的な特徴よりロンリコブイモリPar.longliensisと思われ、重慶市からは初報告であった。福建と重慶の調査の間および前後は、共同研究者のいる四川省の成都に移動して、中国科学院成都生物研究所などの所蔵標本の調査を行った。そこでは、イモリ属やコブイモリ属の各種の基準標本の計測や写真撮影を行うことができた。今年度は過去の2年間のデータをまとめ、数編の論文として公表することもできた。特に現在世界でペットとして販売されているムハンフトイモリと信じられていたイモリが、実は新種であった事を示せたことは、今後社会的にも反響があると思われる。
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