2008年7月22日から8月1日にかけてキナバル山中腹の標高1000m前後からマレーホウビシダを4集団から約80サンプル採集した。また近縁種であり同一高度に成育するウスバクジャクと標高500m前後にのみ生育するウスイロホウビシダの採集もおこなった。採集したサンプルは、形態観察のためのさく葉標本及び生殖様式を確認するための胞子葉(1-2枚)、染色体を観察するための根端、アロザイム及びDNA解析用の葉片、そして胞子を採取するための胞子葉を採取した。各個体の生殖様式は、現地の宿舎で携帯用実体顕微鏡(Nikon、ファーブル)を用いて決定した。次にサンプルを日本に持ち帰り、染色体数の観察によってタイプ分けを行った。その結果マレーホウビシダのなかに2倍体生殖、3倍体無配生殖、4倍体無配生殖のサイトタイプをもつ個体がみつかり、さらに3倍体無配生殖個体は形態形質において二型あり、すなわち大型と小型個体があることがわかった。さらにアロザイム解析と葉緑体DNAの解析からこれらサイトタイプ間の遺伝的関係を推定したところ、これまで予想されていた3倍体無配生殖型大型個体は2倍体有性生殖型と3倍体無配生殖型の雑種起源では説明できないことがわかった。さらにデータは4倍体無配生殖型の起源に別種のウスイロホウビシダが雄親として関わっている可能性を示した。今後さらに遺伝子座を増やすことによってマレーホウビシダの3倍体無配生殖型と有性生殖をおこなうウスイロホウビシダが4倍体無配生殖型が生じていることを示せれば、シダ植物の無配生殖種が雌親として能力を有し、機能していることを世界で初めて証明できる。
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