研究概要 |
1.自家不和合性の検証 アリドオシ属のうち二型花柱性を持つ2倍体3種(Damnacanthus biflorus, D.indicus, D.okinawensis)、および二型花柱性を持たない4倍体2種(D.indicus, D.macrophyllus)の花のサンプルについて、0.05%アニリンブルー(pH=11)染色し蛍光顕微鏡による観察を行った。2倍体では自家受粉および同型の花間での受粉では多くの場合、花粉管の伸長が制限される「自家・同型不和合性」が確認された。自家・同型不和合性は二型花柱性植物の多くでみられる現象であり、本属においてもそれが確認された。一方で、4倍体では自家・同型不和合性はみられず、倍数化が直接の要因、または二型花柱性に関する遺伝子組み替えによる自家・同型不和合性ののち倍数化したと考えられた。 2.分子系統樹の構築 アリドオシ属の分子系統樹を構築するために、葉緑体遺伝子のtrnL-trnF, trnL intronなど11領域に関して塩基配列決定の実験を行ったが、trnL-trnF, trnL intron以外の領域においては、D.indicusの一部において、塩基配列決定ができなかった(他サンプルの混入や技術的問題では無いことはわかっている)。そのため、7分類群78個体において、trnL-trnF, trnL intronの2領域の塩基配列データ(996形質)にもとづく分子系統樹を構築した。その結果、アリドオシ属は2つのクレードに大きく分かれ、2倍体、4倍体の両方がみられるD.indicusでは倍数体間で同じ塩基配列を持つものが複数個みられた。属内においても2倍体と4倍体が各クレードに散在していた。このため、アリドオシ属内においては、倍数化か複数回起こり、特にD.indicusでは4倍体の遺伝子プールに2倍体からの供給が何度もあったことが示唆された。
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