本研究の目的は、種間において交雑させることが可能であるスイレン科コウホネ属を用いて、葉形、生育形、異形葉形成に関する種間の形質差がどのような機構で進化してきたのかを明らかにすることである。研究2年目である平成21年度は以下の内容を実施し、野外におけるコウホネとシモツケコウホネの雑種形成に関する結果を学会発表した。 1. 形態形質調査 平成20年度に引き続き、コウホネ(2集団)、オグラコウホネ(2集団)、サイジョウコウホネ(コウホネ×オグラコウホネ)(1集団)、シモツケコウホネ(3集団)、ナガレコウホネ(3集団)について、集団ごとに10-30株をサンプリングし、コウホネ属の分類に重要とされている形質の他、葉や茎の形態学的な特徴、根茎の成長様式などを調査し、これらの種間の差を明らかにした。 2. 生態調査 平成20年度に引き続き、前述の野外集団において、環境データと共に、葉長や根茎の伸長など、フェノロジー調査を行った。 3. DNA解析 コウホネ属に使用可能なマイクロサテライトマーカーを京都大学農学部の井鷺研と共同で開発し、シモツケコウホネとナガレコウホネの野外集団の遺伝的多様性および集団構造を調査した。
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