イオンチャンネル型グルタミン酸受容体(iGluR)は、グルタミン酸の受容により、Na+などの陽イオンを透過する膜たんぱく質である。哺乳類には少なくとも18種類のアイソフォームが存在しているが、個々の生理的意義は不明な点が多い。個々の蛋白質の機能を明らかにするために、iGluRのアイソフォームを特異的に制御するような化合物の開発が盛んに行われている。iGluRはNMDA型、AMPA型、カイニン酸型の三つのグループに分類されているが、その中でも特にカイニン酸型iGluRの研究は遅れている。ダイシハーベイン(DH)は、天然に存在する毒性の高いアミノ酸で、GluR5とGluR6に高い親和性で結合するが、それを基に様々な構造類縁体が合成され、GluR5やGluR6への結合性や生理活性などが研究されている。 本年度、我々は、カイニン酸型iGluRに属するGluR5とGluR6を制御する種々の化合物とそれぞれの蛋白質の複合体のX線結晶構造解析を行ってきた。 DHの8位の置換基を削っても、あまり親和性は落ちないが、9位の置換基を削ると、2桁親和性が落ちる。その構造的要因は、9位の置換基がないと、化合物のコンフォメーションが大きく変化することによる。9位の置換基の分子内での水素結合の形成であることが、この研究からわかった。また、DHの8位のメチルアミノ基が疎水性相互作用をするのに有利であることも分かった。これらの原子レベル構造情報から、新しい化合物の開発に至った。
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