研究概要 |
本研究は、オロチジンーリン酸脱炭酸酵素(ODCase)が反応を触媒する際の時系列に沿った構造の変化をとらえ、そこからこの酵素の反応触媒機構を明らかにすることを目的としている。すでに昨年度までに、ODCaseは求核・求電子問わず様々な反応を触媒し、いずれの場合においても基質を強く歪めて反応を進行させることを明らかにした。この成果はJ.Mol. Biol.誌に発表した。 本年度は、この基質の歪みが起こる機構を理解するための研究に取り組んだ。実験材料としては、昨年度に引き続きM.thermoautotrophicus由来ODCaseを用いた。これまでに行われてきた100例以上のODCaseの構造解析を通して、基質OMPと相互作用すると考えられる10個全ての親水性残基については、部位特異的変異を行っての反応速度解析および結晶構造解析がなされている一方、基質OMPと疎水的に相互作用すると考えられる残基についての研究例は、ほとんど無い。これらの疎水性残基は、基質OMPのピリミジン環を上下から挟み込むように位置している。また、これら基質と相互作用すると考えられる疎水性残基は、親水性残基と同様に、アミノ酸配列上で全てのODCaseについて保存されている。この疎水性残基がピリミジン環を挟み込む作用は、基質を物理的に固定することで反応時の歪みに貢献している可能性があることから、研究代表者はこれら疎水性残基について部位特異的変異を導入した。作成した変異体については、紫外線の吸光度変化を用いた酵素学的アッセイを行うことでkcat, Kmを測定し、また生成物UMPを始めとした基質アナログとの複合体の結晶構造解析を行った。現在、これらのデータをまとめながら、論文執筆中である。
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