研究課題
本研究ではべん毛モーターの回転方向制御機構を理解するために、回転方向の制御に関わるスイッチ複合体(Cリング)を極低温電子顕微鏡を用いて単粒子像解析によって高分解能の構造解析を行うことを目指している。そのために左回転(CCW)または右回転(CW)に偏った回転を示す変異体からのCリング付きフック基部体を精製し、構造解析を行い、それぞれの構造を比較することによって回転方向変換時の構造変化を可視化する。今年度は電子顕微鏡による構造解析のために、Cリング構成蛋白質の一つであるfliGの変異によりCCWまたはCWに偏った回転を示す変異体に、べん毛構築がフック基部体で止まる変異を導入し、さらにclpP遺伝子を破壊することで、フック基部体の高発現株を作成した。この株を用いて精製法の改良を行ったところ、精製過程にショ糖密度勾配遠心を加えることでこれまで以上に高純度かつ高濃度のCリング付きフック基部体を得ることに成功した。このCリング付きフック基部体を極低温電子顕微鏡で観察し、単粒子解析用のデータの収集を行い、現在構造解析を進めている。Cリングの構造解析における問題点は個体毎にその対称性が異なっていることである。このためすべての粒子像に対して一つの対称性を仮定して解析を行うと対称性のばらつきにより低分解能の構造解析しかできなくなる。そこでフックの変異によってべん毛の構築が基部体で止まる変異体からCリング付き基部体を精製し、極低温電子顕微鏡像から上向きの像だけを選択し、Cリングの対称性の解析を行った。この結果Cリングの個体毎の対称性のばらつきが34回対称を中心に33〜35回対称まで分布することが示された。そこで各対称性毎に平均像を作製し、Cリングの直径を求めた。今後、Cリングの構造解析を行う上でCリングの直径によって分類し、それぞれの対称性を仮定して構造解析を進めていく予定である。
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未来材料 9
ページ: 6-8
AIP Cpnf. Proc 1062
ページ: 116-122
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labo/09a.html