研究概要 |
本研究では細菌べん毛モーターの回転方向制御機構を理解するために、回転方向の制御に関わるスイッチ複合体(Cリング)の構造を極低温電子顕微鏡を用いた単粒子像解析によって解析した。そのためにスイッチタンパク質の一つであるFliGの変異によって左回転(CCW)または右回転(CW)に偏った回転を示す変異体(バイアス変異体)からのCリング付きフック基部体を精製し、構造解析を行い、それぞれの構造を比較することによって回転方向変換時のCリングの構造変化を可視化した。 昨年度から引き続きCCW, CWバイアス変異体基部体の電子顕微鏡によるデータ収集を行い、三次元構造解析を試みた。切り出した基部体像をさらにMリングとCリングの一部を含む領域(Cリング上部)とCリング全体像(Cリング下部)に分けそれぞれの領域を別々に解析した。Cリング下部構造はその直径に従って33~35回対称に分類し、構造を構築した。両者の構造はリングの側面のドメイン配置と内側のリングの位置に大きな変化があった。Cリング上部は26回回転対称を仮定し三次元構造を構築した。CCW, CWの構造を比較するとMリング直下の密度の配置が両者において大きく変化していた。このようにCCW, CW間のCリングの構造変化の可視化に成功した。Cリング上部は主にFliGタンパク質からできていると考えられている領域であるが、現在の三次元構造は20A程度でありFliGの原子構造を当てはめることは難しい。このためFliGのN末端またはC末端にフルオリンを融合させた基部体を構築した。これらの内、N末端融合タンパク質を持つ基部体はCリングの構造を保持したまま精製が可能であり、このCリング構造を解析することでCリング構造中のFliGタンパク質の位置と配向を決定することができると考えられる。
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