研究概要 |
ミトコンドリアを構成するタンパク質の大部分は核ゲノムDNAにコードされている。ミトコンドリア内部へと運ばれるタンパク質は細胞質のリボソーム上で、プレ配列が付加された前駆体タンパク質として合成される。その後、ミトコンドリアの2つの膜に存在する膜透過装置(タンパク質からなる超分子複合体)によって外膜と内膜を通過しミトコンドリア内部へと輸送される。この輸送過程において、Tom20はプレ配列を最初に認識する受容体である。我々は最近、Tom20が非常に多様なプレ配列のアミノ酸配列を認識できるメカニズムとして、「複数のコンホメーションの動的平衡を使っている」という認識様式を提唱した。本研究では、Tom20が持つプレ配列への広い選択性を過去の研究成果の蓄積をもとに、構造解析と動的解析を組み合わせた総合的なアプローチを展開し、発展的な研究を行う。平成20年度はリンカーを用いないTom20とプレ配列の複合体の安定化技術として、プレ配列内にD型システインを導入したプレ配列を用い、X線結晶構造解析を試みた。その結果、0.5M MgCL, 20%PEG3000, 0.1M Tri pH8.0の条件で、複合体の結晶化に成功した。つくばの放射光施設でX線結晶構造解析に用いる反射データの測定を行い、2.1Å分解能での複合体の構造解析に成功した。驚いたことに得られた複合体構造はこれまで知られているものとは異なる相互作用様式を示していた。すなわちTom20がプレ配列の動的認識を行っていることを証明する新たなサポートデータが得られた。
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