研究概要 |
海産無脊椎動物グミ(Cucumaria. echinata)由来溶血性レクチンCEL-IIIの膜孔形成複合体構造解析を行うため、1.CEL-IIIの精製・膜結合型オリゴマー形成、2.結晶化、3.X線回折データ収集、4.結晶化条件の最適化、と進めた。以下にその具体内容を示す。 1. これまでに確立している方法により、グミ破砕液から水溶性CEL-IIIモノマーの精製そしてそれを用いて6~7量体の膜結合型オリゴマー構造と推定されるオリゴマー型CEL-III複合体を調製した。 2. 得られたCEL-IIIオリゴマーをゲル濾過クロマトグラフィーによりさらに精製し、濃縮する事で5mg/mlの蛋白質溶液を得た。これを用い各種条件での結晶化スクリーニングを試みた所、複数の結晶化条件で針状の蛋白質結晶を確認した。針状結晶の得られた結晶化条件をベースとして、沈殿剤濃度、結晶化温度、クライオプトテクタントの種類と濃度、および界面活性剤の種類の検討を行った結果、改良した結晶化条件において、0.1mm程度の大きさの板状結晶を得る事に成功した。 3. 得られた板状結晶を高エネルギー加速器研究機構にてX線回折測定を行い、分解能約7Åにてデータ収集に成功した。空間群はC2、格子定数は、a : 251.816, b : 169.854, c : 144.844,α=γ:90.000,β:117.042であった。溶媒含有率の計算から、非対称単位中にCEL-IIIオリゴマーが6~7量体として、一複合体が存在していると推測された。 4. 分解能の向上を行うため、各種界面活性剤を用いた結晶化を行った結果、結晶化に適した界面活性剤使用下での、新規の結晶化条件を得る事に成功した。 膜蛋白質は一般的に大量発現および精製が難しく、今年度の一年間にて結晶化の成功および界面活性剤の検討に成功した事は特筆に値する事項である。報告例が非常に少ない膜蛋白質の結晶構造解析研究を進める上で、これは大きな前進であると考えている。
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