ヘムオキシゲナーゼ(HO)は酸素分子とNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からの還元力を用いる3段階の酸素添加反応によって、ヘムのα-meso位を部位特異的に開裂し、ヘムをビリベルジン、一酸化炭素、鉄へと分解する酵素である。本研究ではCPRからHOへどのように電子が受け渡されるのかについて明らかにすることを目的としている。 これまでの研究で、HO反応の第3過程であるベルドヘムからビリベルジンへの変換では、還元力供給にFMNが必要ないことが分かっていた。今回、野生型CPRとFMN欠損CPRを用いて、HO反応の第2過程であるαヒドロキシヘムからベルドヘムへの還元力供給経路を検討した結果、第3過程とは異なり、CPRに結合したFMNが必須であることが分かった。 CPR-HO複合体の立体構造は還元力供給経路を考える上で、最も重要な構造であるが、良質なCPR-HO複合体結晶は現在まで得られていない。野生型よりも安定なCPR-HO複合体を得るために、CPRのFADドメインと連結ドメインをつなぐヒンジ領域を切除したCPRを用いたところ、非常に安定な複合体をHOと形成することが明らかになった。本変異CPRは野生型と比べると遅い速度ではあるが、ヘム-HO複合体を還元できることも分かった。また、野生型CPRとの相互作用が低下する変異HOは、本変異CPRとの相互作用低下も示唆された。以上のことは、本変異CPRとHOの相互作用様式は野生型と大筋では変わらないことを示唆している。そこで、現在は本変異CPRとHOの共結晶化を試みている。
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