多細胞生物にとって統制のとれた一つ一つの細胞の形態の変化や細胞移動は、一つの生命体として個体を維持するために絶対必要不可欠なものである。細胞運動、細胞分裂、細胞接着、エンドサイトーシスなどの多様な生体反応において動員されるのはアクチン細胞骨格である。アクチン細胞骨格の制御は、N-WASPファミリータンパク質がArp2/3 complexを活性化し、アクチン重合が促進されるなりことにより形成される事が明らかとなっているが、細胞膜からどのようにN-WASPファミリータンパク質にシグナルが伝達され、制御が行われているかは不明である。これまで当研究者はN-WASPと結合するFBP17およびCIP4の構造を明らかにし、細胞膜の形状がFBP17などのタンパク質の重合により形つけられていることを明らかとしてきた。そこで、当研究ではまだ明らかとなっていないFBP17のC・末端ドメインおよび、FBP17と結合する低分子Gタンパク質であるRnd2タンパク質の複合体の構造解析により、シグナル伝達の分子メカニズムの解明を目指している。現在遺伝子のクローニングおよびクンパク精製に成功し、結晶化を試みているところである。さらにアクチン重合の制御システムの解明のため、N-WASP+HSPC300+Actinの三者複合体の構造解析も目指している。HEK293のタンパク質発現システムを用いて三者複合体の精製にも成功し、現在結晶化中である。これらの構造解析を行うことにより、N-WASPファミリータンパク質の構造を基盤とした分子レベルでのアクチン骨格制御機構を明らかとすることが出来ると期待している。
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