我々はこれまで報告されていた605アミノ酸残基からなるPPM1D605のみならず430アミノ酸からなるPPM1D430が存在することを同定するとともに、各PPM1Dの細胞内局在が異なることを明らかにしている。2009年度はこれらのPPM1Dアイソフォームの機能解析を実施した。 1.PPM1D430の酵素活性測定 大腸菌システムを用いて、高純度のPPM1D430組換えタンパク質を発現・精製した。PPM1Dのターゲットとして報告されているがん抑制タンパク質p53の15位リン酸化Serについて、複数のペプチドアナログを化学合成し、PPM1D430の酵素活性を測定した。その結果、PPM1D430はPPM1Dの触媒ドメインと同様に高い酵素活性を有しており、特に酸性残基に富んだ基質に対して高い親和性を有することが明らかとなった。 2.PPM1D430の細胞周期制御タンパク質に対する脱リン酸化能の解析 遺伝子増幅によりPPM1Dが過剰発現している乳がん由来MCF7細胞について、siRNAを用いてPPM1Dを特異的にノックダウンし、各PPM1Dタンパク質の細胞周期制御タンパク質に対する効果について解析した。PPM1D430を単独でノックダウンし、アドレナマイシンによる遺伝毒性刺激を与えたところ、各PPM1Dを同時にノックした場合と同様にp53のタンパク質レベルおよびp53タンパク質の15位リン酸化の顕著な更新が見られた。これらの結果より、我々が同定したPPM1D430はp53のリン酸化レベルを調節し、細胞周期制御に重要な役割を果していることが示唆された。
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