PPM1D605およびPPM1D430の新規機能の同定 PPM1Dが免疫応答に重要な役割を果たしていることが示唆されているため、正常血球由来細胞におけるレクチン刺激によるPM1D発現量変化をRT-PCRにより解析した。単核細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、およびB細胞において、レクチン刺激後にPPM1D430の減少が観察された。一方、単核細胞とT細胞ではPPM1D605に刺激による減少は見られず、PPM1D430とPPM1D605間でレクチン刺激に対する応答に違いが見られた。PPM1Dノックアウトマウス由来のT細胞、B細胞は、増殖性刺激に対する応答に欠陥が見られることから、レクチン刺激時にPPM1D発現量が減少することにより細胞増殖の制御に関与している可能性が示唆された。次に、ヒト腫瘍由来の培養血球細胞におけるレクチン刺激の効果を解析した。ヒト急性T細胞白血病由来Jurkat細胞(CD4+)およびヒト多発性骨髄腫由来IM-9細胞(CD19+)をレクチンで刺激した結果、どちらの細胞でもPPM1D605およびPPM1D430に刺激による減少は見られなかった。これらの結果より、正常血球細胞と腫瘍由来血球細胞でレクチン刺激に対するPPM1D発現量変化に違いがあること、また一部の血球ではPPM1D430とPPM1D605の応答性に違いが見られることが明らかとなり、PPM1Dスプライシングバリアントの機能が各免疫細胞により異なる可能性が示唆された。 また、PPM1Dの新規機能を解析するため、HA標識したPPM1Dを培養細胞に発現させ、免疫共沈降実験を実施し、PPM1D新規結合タンパク質として複数の核内タンパク質を同定した。現在これらのタンパク質に対するPPM1Dの脱リン酸化能、ならびに機能制御機構について解析を実施しており、今後PPM1Dの新規機能が明らかになることが期待される。
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