Hirosaki Hairless Rat(HHR)はSprague-Dawley Rat(SDR)から生じたHair keratin遺伝子群の一部が欠失した乏毛を呈するラットである。HHRの雌は授乳期早期に乳腺がアポトーシスによって退縮してしまうために哺乳能力が低下していることが知られている。 Hair keratinはこれまで単なる毛や爪などの構造タンパク質として考えられてきたが、HHRでは発毛の異常以外にも乳腺の発達異常が認められるため、Hair keratinは乳腺で何らかの機能を担っていることが予想される。本研究では乳腺におけるHair keratinの発現と機能解析を試みた。昨年度の研究によりHHRではHair keratin Kb21が発現していることが明らかになったため、Kb21がどのような機能を担っているのかを検討した。 SDRとHHRの乳腺由来cDNAをもとに酵母Two-hybrid法でKb21と結合するタンパク質を検索したところ、リボソームのlarge unitであるribosomal proteinがSDRとHHRで同定された。このタンパクはタンパク質合成に関与するため、HHRではKb21の欠失により授乳期におけるタンパク合成能力が低下していることが示唆された。また、Hair keratin Kb21とCytokeratinが相互作用している可能性が考えられるので、これらケラチンの乳腺組織における局在を調べ、Kb21が欠失することで、細胞骨格のネットワーク構築がどのように異常をきたしているかを解析中である。
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