本研究の目的は、シグナル伝達系構成要素の再構成による相互作用解析を行い、その伝達機構を明らかにすることである。このため、既に詳細な解析が行われているTNFシグナル伝達系を対象として、受容体、リガンドを組換えタンパク質として調整し、これらの相互作用解析をQCM法(水晶振動子マイクロバランス)を用いて行なう。H20年度は、TNFファミリーの中でも、癌細胞に受容体が特異的に発現されることが知られている、TRAIL及びTRAIL受容体に着目し、受容体およびリガンドの組換えタンパク質発現を行なった。この過程で、TRAIL受容体については、リガンド結合領域に位置する非同義置換SNPが癌に対する疾患感受性と関連するとする報告があるため、これらの多型を持つ可溶型受容体を組換えタンパク質として調整し、リガンド結合親和性に与える影響を相互作用解析により明らかにすることとした。TRAILリガンド・受容体ともに、大腸菌発現系において封入体として発現されたため、先行研究を参考に変性・リフォールディングを行った。受容体については、リフォールディング条件の検討を現在進行中である。また、QCM法による相互作用解析における条件検討を行なう目的で、既に先行研究において解離定数が報告されているTNFαの高親和性・低親和性部位置換変異体および、TNF受容体2を同様に組換えタンパク質として調整した。今後、これらのタンパク質を用いて、受容体タンパク質のQCM電極上への固定化方法を確立し、相互作用解析を行う予定である。
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