転写因子Hesは、周期的に発現を振動させてリズムを刻み、個体発生のタイミングを制御すると考えられてきた。リズムを刻むためにはHesの速やかな分解が必要だが、その分解がどのように制御されているのか、またHesのリズムが実際にどのように細胞分化を制御しているのかは分かっていなかった。まず、Hes7タンパク質の分解について検討を行い、いくつかのアミノ酸がタンパク質分解だけではなくHes7の機能に必須であることを明らかにした。また、マウス胚性幹(ES)細胞においてHes1の発現量が3-5時間の周期で振動(オシレーション)しており、Hes1の発現量に応じて分化の方向が異なること(Hes1が高い細胞は初期中胚葉に、低い細胞は神経に分化すること)を見いだした。さらに、Hes1の発現を完全に失ったES細胞は、高い効率で均一に神経系に分化することを明らかにした。遺伝的に均一な集団であるES細胞が、Hesのリズムを利用して様々な細胞に分化する能力を調節していることが分かった。
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