細胞の興奮メカニズムの機能を明らかにすることを目的として、細胞内カルシウムの動員に関与する分子、特に広範囲の細胞に発現しているカルシウム結合蛋白質カルモジュリン(CaM)とカルシウムを透過するCaチャネルの制御機構に関して研究を行った。CaチャネルのCaM結合部位であるIQモチーフとCa^<2+>CaMの断片的複合体のX線結晶構造解析に成功し、分子シュミレーションとの組み合わせから、新たな機能と構造の関連性を見出した。このことから、カルシウムフリーのapoCaMとCaチャネル断片(電位依存性L型)に対して行い、構造的基盤を明らかにすることを試みた。分子置換法を用いてその構造を決定したが、解析の結果、結晶はapoCaMの二量体を形成のみで、Caチャネルの断片を同定するには至らなかった。そこで、変異型apoCaMを用いてチャネルとapoCaMの複合体結晶を得るべくスクリーニングを行った。幾つかの結晶が得られているが、構造解析には至っていない。一方、細胞内カルシウム濃度に依存したCaMとチャネルの細胞内での相互作用を観測するため、新たにFRETによる相互作用と細胞内カルシウムの準同時計測システムを開発した(Semi-simultaneous Imagingsystem)。 本手法により、カルシウム依存的なCaMのチャネルに対する作用を細胞内で観察することが可能になってきた。その結果、イオンチャネルーCaM複合体におけるカルシウム感受性はイオンチャネルごとに大きく異なっていることが新たに明らかになった。現在、本手法論に関する論文を作成中である。また、応用的であるイオンチャネル-CaMの感受性については更に生理的機能との関連性について研究を進める必要がある。
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