研究概要 |
パーキンソン病はアルソハイマー病に次いで2番目に高い羅患率を示す老人性神経変性疾患である.病気が発症する仕組みの解明と,その知見を活かした根本的な治療法の確立が強く求められているが,その発症機構については諸説あって,定説が存在していなかった.2008年にアメリカのYouleらの先駆的な仕事によって,若年性パーキンソン病が膜電位を失ったミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)に関係することが示唆された.われわれも直ちにミトコンドリアの膜電位とパーキンソン病の関係に焦点を絞って研究を行い,(1)Parkinが膜電位を失ったミトコンドリアヘ移行してミトコンドリアを分解する為にはPINK1が必須であること,(2)Parkinは普段は酵素的に不活性型に保たれているが,ミトコンドリアの膜電位かせ失われることによって活性型へと変換されること,(3)一連のプロセスの最上位のイベントはPINK1の膜電位依存的な切断と分解であり,この仕組みによってPINK1が膜電位を失ったミトコンドリア上に特異的に局在化すること,(4)上記のプロセスがParkinやPINK1の患者由来の変異によって阻害されること,などを見いだした.そしてこれらの知見を論文として報告した.われわれも含む国内外のグループからの論文によって,「神経細胞内でミトコンドリアの品質管理が破綻し、膜電位に異常を持つミトコンドリアが細胞内に蓄積することによって,パーキンソン病が発症する」という仮説は確かなものになりつつある. MG53という細胞の修復に関与するユビキチンリガーガに関しても引き続き解析を行なった.
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