研究課題
スフィンゴ脂質の恒常性の維持が個体にとって非常に重要であることは培養細胞やノックアウトマウスを用いた研究より明らかとなっている。しかしスフィンゴ脂質各分子種がどのような機構で様々な生理作用を示すのか、その原因については不明な点が多く、これら作用点を解析するためには細胞生物学的見地からのスフィンゴ脂質の代謝・輸送機構の解明が不可欠である。本研究ではレトロウイルスによる遺伝子トラップ法(UPA-Trap法を使用)とcDNA過剰発現系の両システムを志賀毒素耐性株単離のスクリーニングに用いることで、生体膜の機能的脂質として重要な役割を果たしているスフィンゴ糖脂質の代謝・細胞内輸送に関与する遺伝子群を効率的に単離、解析することを目的としている。平成20年度は上に記した2つのスクリーニング系を用いて、(1)志賀毒素感受性CHO細胞において、数種の志賀毒素耐性株の樹立、(2)Hela細胞を用いて2種類の志賀毒素耐性遺伝子の単離、に成功した。(1)の耐性株のうち1つは志賀毒素受容体Gb3の生合成に必須な因子UDP-Galactose transporterの遺伝子破壊株であった。他の耐性株に関しては現在解折中であるがどのクローンも受容体Gb3の低下したものであった。一方cDNA過剰発現系を用いた志賀毒素耐性遺伝子として、糖脂質GM3の合成酵素(ST3GalV)全長と機能未知の複数回膜貫通タンパクの一部を同定した。GM3はGb3生合成と同様ラクトシルセラミドを基質としており、ST3GalVの過剰発現によってGb3の生合成を競合的に阻害していた。もう一方の耐性遺伝子においてもGb3生合成の低下が見られており、現在その作用機序について解析を進めている。
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Biochim Biophys Acta. (印刷中)
IUBMB Life. 60(8)
ページ: 511-518