研究課題
スフィンゴ脂質の恒常性の維持が個体にとって非常に重要であることは培養細胞やノックアウトマウスを用いた研究より明らかとなっている。しかしスフィンゴ脂質各分子種がどのような機構で様々な生理作用を示すのか、その原因については不明な点が多く、これら作用点を解析するためには細胞生物学的見地からのスフィンゴ脂質の代謝・輸送機構の解明が不可欠である。本研究ではCHO細胞を用いたレトロウイルスによる遺伝子トラップ法とHeLa細胞を用いたcDNAライブラリーによる発現クローニング法の両システムを志賀毒素耐性株単離のスクリーニングに用いることで、生体膜の機能的脂質として重要な役割を果たしているスフィンゴ糖脂質の代謝・細胞内輸送に関与する遺伝子群を効率的に単離、解析することを目的としている。平成21年度は上記の発現クローニング法により単離された2種類の志賀毒系耐性遺伝子のうち、機能未知の遺伝子についてその作用機構の詳細を解析した。この遺伝子を発現させると糖脂質のうち志賀毒素受容体であるGb3の他、Gb2やdigalactosyl diacylglycerolの低下が見られた。これらはいずれもGb3合成酵素により生成される糖脂質であり、また同酵素を過剰発現させることで糖脂質組成がもとに回復することから、この酵素が何かしらの影響をうけている可能性が示唆された。ただしGb3合成酵素のmRNAは変化しないことより、作用点は転写以降と考えられる。この現象は、HeLa細胞だけでなく他の細胞株(JEG-3細胞)においても見られたことより、様々な細胞において共通の作用機構が存在するものと推測される。
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