研究概要 |
リボソームの機能発現とダイナミクスの関係を調べており、質量分析法を用いた反応中間体の水素/重水素(H/D)交換実験を行っている。転移過程でのリボソームは二つのサブユニット間の回転運動が主な動きとして既に知られているが、その時の各蛋白質のダイナミクスの変化について観察した。転移の構造変化が常に起こっているUnlock状態と、GTPアナログを使用することで構造変化が止まっているLock状態に対して、触媒反応に近い時間スケールである20ms間のH/D交換実験を行ったところ、Unlockに比べLockの方が交換されにくく、50Sより30Sサブユニットの蛋白質の方が大きく影響を受けることが分かった。機能関連蛋白質を詳細に見ると、tRNA出入口(L16,L25,S12,L31,L33)やシフト(S13)に関わる蛋白質はより高度に交換され、Unlock状態では交換率が同調する傾向にあった。しかしmRNAの出口(S7,S11)や入口(S3,S4,S5)はそれほど高い交換率ではない。特に入口は同調も見られず、S3はUnlock状態でも交換が低かった。これらのことはtRNAの結合、解離、シフトには各蛋白質の揺らぎも大きく関与し、逆にmRNAはrRNAの回転運動の方がより大きく影響することを示している。特に入口のS3蛋白質近傍はmRNAシフトに重要であることも示唆された。
|