研究概要 |
SOD1はCu, Znイオンを結合し、分子内S-S結合を形成することで活性化する酵素である。これらの翻訳後修飾がSOD1凝集に及ぼす影響を検討した結果、アポ・s-s結合還元型のみが不溶性となった。この不溶性SOD1凝乗物はアミロイド線維に見られる分光学的特徴を呈し、直径約10nmの線維状形態を有することが原子間力顕微鏡により明らかとなった。さらに、変異SOD1 (G37R)を発現したトランスジェニックマウスの脊髄においてもThioflavin-S (アミロイド様構造に結合することで蛍光を示す有機小分子)に陽性の構造物が認められた。そこで、まず、ALS変異がSOD1のZnイオン結合に及ぼす影響を分光学的手法(Coイオンをモデルとして用いた)により検討したところ、SOD1とZnイオンの結合がALS変異(G37R, G85R, G93R)により低下することが示唆された。次に、培養細胞にSOD1を発現させ、S-S結合を持つSOD1の細胞内での割合を電気泳動法により決定したところ、一部のALS変異(G85R)によりS-S結合型の割合が著しく減少していた。よって、ALS変異によりSOD1の翻訳後修飾が不完全になることでアポ・S-S結合還元型の割合が増加し、アミロイド線維様に凝集すると考えられる。そこで、SOD1を活性化させる金属シャペロン蛋白質であるCCSを培養細胎内にSOD1と共発現させると、S-S結合型SOD1の割合が増加し、ALS変異SOD1の凝集が抑制された。以上の結果から、翻訳後修飾過程を促進させることがSOD1の細胎内凝集を抑制する有効な手段であることが分かった
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