DNA複製・修復・組み換えは、種の遺伝的連続性を保証する最も重要な機構である。DNA複製が驚くほど複雑なのは、世代を通じてゲノムを保全するため、きわめて正確でなければならないことによると考えられている。現時点では、これらの機構でさまざまなタンパク質分子が実際にどのように相互作用しつつ、非常に複雑な反応を速やかに、そして絶妙の精度で触媒するのかについてのダイナミクスはわかっていない。そのダイナミックなプロセスの理解には、直接タンパク質が機能している現場を可視化することが鍵となる。 そこで、本研究では、これまでの研究で主に取り扱ってきたDNAへリカーゼUvrDが大腸菌のDNA損傷除去に重要な役割を果たしているヌクレオチド除去修復、ミスマッチ修復に焦点を絞り、蛍光標識したDNA結合タンパク質を用いて、DNA上でのタンパク質問の相互作用を1分子イメージング測定することにより、DNA修復機構の素過程をDNA上でのタンパク質間の相互作用を1分子レベルで解明することを目的とした。 平成21年度は、平成20年度にクローニング・発現・精製の系を確立したDNA修復タンパク質などについて、蛍光標識を試みた。DNAへリカーゼUvrDのDNAへの結合分子数の1分子イメージングについては、ATP存在下でも、結合分子数が複数であることを明らかにした。この実験によって得られた結果は、UvrDが単量体ではなく、多量体でヘリケース活性を発揮していることを示している。また、タンパク質問相互作用を1分子顕微鏡で測定するために、損傷が挿入されたDNAの作製を行い、ガラス基板やμmサイズのビーズに固定するためのDNA末端の修飾を行った。さらに、蛍光1分子イメージング顕微鏡の開発を行い、蛍光標識したDNA修復タンパク質が、損傷を挿入したDNAと相互作用している現場を可視化することができた。
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