研究概要 |
マイクロRNA(miRNA)の機能を解明するための基盤を構築すると同時に,miRNAによる遺伝子の発現制御ネットワークの全体像を理解することを目的として,ヒト全miRNAの発現ベクターライブラリの構築およびmiRNAの活性を定量的にモニタリングできる「miRNAセンサー」の構築を前年度に引き続きおこなった.miRNA発現ベクターは,ヒトのゲノムDNAを鋳型にPCRで前駆体miRNA配列を含む領域を増幅し,発現ベクターに挿入した.また,miRNAセンサーは,成熟miRNAの標的配列を合成DNAオリゴヌクレオチドで作成し,これらをルシフェラーゼ遺伝子の下流部分に挿入したベクターの構築をおこなった. miRNAは,seedとよばれる7塩基の領域(5'末端から2-8番目)を利用して標的となるmRNAの3'UTRに結合することが知られている.これと同様に,siRNAもseed(ガイド鎖の5'末端から2-8番目)と相補的な配列がmRNAの3'UTRにある場合,それらの遺伝子が抑制される場合がある.本来の標的以外の遺伝子が意図せず抑制されることをsiRNAのオフターゲット効果と呼び,siRNAを用いる上で大きな課題と考えられている.我々のグループでは,siRNAのseed領域とmRNAが対合するときの熱力学的安定性の強さが,オフターゲット効果の大きさと強い相関があることを明らかにしている.本研究ではこの結果を取り入れ,seedの熱力学的安定性が低く,オフターゲット効果が弱いと予測されるsiRNAを設計できるようなウェブサーバ「siDirect 2.0」を構築し,公開した(http://siDirect.RNAi./jp/).
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