WTAPはサイクリンA2mRNAの安定化を介して細胞周期を調節している。そのメカニズムを明らかにするために、WTAPに対する特異的抗体を3種類作成し、プロテオミクスによる複合体解析をした。その結果、3種類の抗WTAP抗体での免疫沈降により、共通`してvirilizerホモログ、E3ユビキチンリガーゼ、zinc fingerタンパク質、数種のRNA結合タンパク質を含む複合体を得ることができた。さらに複合体に含まれていたE3ユビキチンリガーゼに特異的なモノクロナル抗体を作成し、同様に複合体のプロテオミクス解析を行ったところ、WTAPおよびWTAP複合体が得られており、このことは少量の細胞から、高親和性抗体と新規高機能磁気ビーズにより内在性核内複合体を高感度に同定できたという点で重要である。 さらに、細胞周期に伴う構成タンパク質の変化を系統的に解析するために、細胞周期を同調させたHeLa細胞を用いてプロテオミクス解析を行った結果、構成タンパク質の一部がM期にかけて多く結合している傾向が見られており、WTAPのサイクリンAmRNAの安定化に関係している可能性がある。RNAプロセッシングによる遺伝子発現調節は、既存のプロセッシング関連因子の組み合わせ、その量、局在、修飾を変えるだけで、細胞内の環境変化に迅速に対応していると考えられるため、定量解析および質量分析器でのMS/MSIMS測定リン酸化部位の同定など、高感度に細胞周期に伴うタンパク質レベルの変化を解析することが重要であると考えられる。
|