研究課題
本研究計画は、大腸菌低分子RNAによる遺伝子発現抑制系を詳細に解明することを目的にしている。申請者らはこれまでに大腸菌低分子RNAのひとつであるSgrSによるptsG mRNAの抑制系の解析を行い、機能実体としてSgrS/Hfq/RNase E複合体の存在を明らかにし、SgrSによるptsG mRNA抑制において翻訳抑制が第一義的であることを示した。これらの結果から、翻訳抑制により効果的にptsG mRNAが抑制され、またSgrS/Hfqと相互作用するRNase Eにより不要になったptsG mRNAが速やかに分解される、という分子モデルを提唱した。平成21年度においては、平成20年度の成果を発展させ、合成RNAを用いてptsG mRNAの翻訳抑制に必要な塩基対形成の最小領域をin vitro再構成系により解析した。その結果、合成RNA/ptsG mRNAの14塩基対がptsG mRNA翻訳抑制に十分であることを見いだした。これらの成果を、科学雑誌「Molecular Microbiology」に学術論文として発表した。これらの結果は、広く存在するRNA抑制系の原理の解明に貢献すると考えられる。また、Hfq/RNase Eの結合について解析し、RNase EのHfqとの結合領域の同定、およびRNase Eに対する他のRNase E結合因子とHfqの競合を示した。これらのことは、低分子RNAの作動原理の解明に大きく貢献すると考える。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
Mol.Microbiol. 76
ページ: 782-792
FEBS lett. 583(9)
ページ: 1446-1450