【平成20年度研究成果】 全ての細胞性生物の増殖、個体と種の維持において、遺伝情報を担う染色体DNAの複製は、必要不可欠なプロセスである。この染色体DNA複製は、細胞周期の適切な時期に一度だけ起こり、正確に二倍化するように厳密に制御されている。この制御は主に複製開始段階で起こっている。大腸菌の染色体DNA複製開始反応は、染色体DNA上の複製起点(oriC)上で起こる。開始蛋白質DnaAのArP結合型はoriC上で、特異的な高次複合体を形成し、二重鎖DNA開裂を引き起こす。これにより、開裂した一本鎖DNA領域上にDnaBヘリケースが装着され、一本鎖DNA領域を拡大していくことで複製開始反応が進行していく。ホモ4量体である複製開始促進因子DiaAは、複数のDnaA分子と複合体形成し、oriC上へのDnaAの集合を促進する。これによりDiaAは複製開始を促進している(Keyamura et al. GenesDev. 2007)。本研究では、oriC上でのDiaAを介した高次複合体がどのように二重鎖DNAを開裂し、DnaBヘリケースを装着させるのかに着目した。 目的1. DiaAを含むDnaA-oriC開裂複合体の構造様式の決定。 申請者は、DnaA内のDiaA結合部位を決定し、DiaAとDnaAの結合様式を明らかにした。さらに、変異DnaA蛋白質の解析結果と既に報告されている構造学的知見とを統合し、新しいDiaA-DnaA-oric開裂複合体構造様式を提唱することができた。さらに、DiaAがDnaBヘリケース装着を制御しているという新しい概念を見出した(Keyamum et al.論文投稿中)。 目的2. DnaBヘリケース装着機構およびDiaA制御機構の解明。 細胞粗抽出画分中にDiaAの活性を制御し、DnaB装着を進行させる因子の存在が示唆されている。申請者は、DiaAの活性制御因子を同定するための実験系を構築した。平成21年度において、DiaA制御因子の同定・解析を行う。
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