【研究背景と目的】大腸菌の染色体DNA複製開始反応は、染色体DNA上の複製起点(oriC)上で起こる。oriCは開裂領域と複数のDnaA結合領域から構成されている。開始蛋白質DnaAのATP結合型がoriC上のDnaA結合領域を介して、特異的な高次複合体を形成し、開裂領域での二重鎖DNA開裂を引き起こす。これにより、開裂した一本鎖DNA領域上にDnaBヘリケースが装着され、一本鎖DNA領域を拡大していくことで複製開始反応が進行していく。ホモ4量体であるDiaAは、複数のDnaA分子と複合体形成し、oriC上へのDnaAの集合を促進する。さらに、DiaAはATP-DnaAとoriCの特異的な高次複合体形成を促進し、二重鎖DNAの開裂を促す(Keyamura et al. Genes Dev. 2007)。本研究では、oriC上でのDiaAを介した高次複合体がどのように二重鎖DNAを開裂し、DnaBヘリケースを装着させるのかに着目し、以下の2つの目的を掲げ研究を行った。 【研究成果】目的1. DiaAを含むDnaA-oriC開裂複合体の構造様式決定。申請者は、DnaA内のDiaA結合部位を決定し、DiaAとDnaAの結合様式を明らかにした。この結果と構造学的知見とを統合し、新しいDiaA-DnaA-oriC開裂複合体構造モデルを提唱することができた。さらに、DiaAがDnaBヘリケース装着を制御しているという新しい概念を見出し、原著論文として発表する事ができた(Keyamura et al. J.B.C.2009)。 目的2. DnaBヘリケース装着機構及びDiaA制御機構の解明。細胞粗画分中にDiaAをoriC上のDnaAから解離させ、DnaB装着を進行させる因子の存在が示唆された。申請者は、このDiaAの活性制御因子を同定するための実験系を構築した。さらに、構築した実験系を用いて、粗画分からの因子の精製を進めた結果、20種類程度の蛋白質まで絞り込む事ができた。
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