研究概要 |
大腸菌の分裂位置調節に関与するタンパク質(MinC, MinD, MinE)、およびFtsZの細胞膜表面における機能解析のため、それぞれのタンパク質を大量精製した。精製の結果、いずれのタンパク質も活性を保ったまま、解析に十分量のタンパク質を精製する方法を確立した。精製したタンパク質の膜表面への結合を蛍光顕微鏡で観察するために、蛍光ラベル化したタンパク質の作製を試み、その結果、活性を保った状態の蛍光ラベル化タンパク質を得る事に成功した。そこでまず、それら蛍光ラベル化タンパク質を用いて、溶液内におけるタンパク質間の相互作用を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)としての観測を試みた。その結果、MinCとFtsZタンパク質間の相互作用をFRETとして観察する事に成功した。解析の結果、反応溶液内でMinCは重合状態にあるFtsZよりもむしろモノマー状態のFtsZと相互作用する事を見いだした。この結果は、膜上のタンパク質の相互作用をFRETとして観測出来る可能性を示す重要な知見であり、膜表面に結合するいくつかのタンパク質間の相互作用も可視化できる事が期待される。この結果に関して、現在論文の投稿段階にある。一方、ガラスおよびマイカ基板表面に大腸菌の脂質由来の膜の構築を試みた。大腸菌由来の脂質を用いて数百nm程度のリボソームを作製し、基板上に設置後の基板表面を、共焦点レーザー顕微鏡および原子間力顕微鏡で評価した。その結果、数百nm〜1μm程度の平面性の高い膜構造が基板表面に形成される事を見いだした。実施初年度に、すでに基板上に膜構造を形成する基本的な条件を確立することが出来た。次年度は、基板上の膜構造の面積を拡大する条件を確立するなど、膜表面のタンパク質の観察に適した作製条件を決定する。そして、膜表面に結合するMinタンパク質の観察し、膜表面でのタンパク質の分子挙動を明らかにする。
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