平成20年度で得られた成果は大きく分けて下記の2点である。 第一に、出芽酵母および分裂酵母Mcm10に関してこれまで発表されていた知見の追試を行った結果、これまで混乱した状況であったMcm10の機能が徐々に整理されつつある点である。この追試は公に発表される事が全くなく、真核生物DNA複製開始機構に携わる研究者らが混乱している現状下で、非常に有益な知見である。 第二に、出芽酵母Mcm10と直接相互作用する因子を探索し、同定しつつある点である。これまで、粗抽出液からのプルダウンや酵母2ハイブリッドによる相互作用でMcm10との相互作用因子が推定されていたが、本研究で直接的な相互作用が確認された事で、真核生物Mcm10が染色体DNA複製開始のどの段階で機能しているかが、明らかになりつつある。 1. 出芽酵母および分裂酵母Mcm10の知見に関する追試 Mcm10のPolαのプライマーRNA合成促進効果およびMcm10のプライマーRNA合成活性について検討した。その結果、出芽酵母および分裂酵母何れのMcm10も、これらの活性は検出されなかった。また、酵母Mcm10の多量体形成について検討した結果、出芽酵母Mcm10はこれまでゲル濾過のみの結果から報告されていた巨大なホモ多量体では無く、二量体程度である事が示唆された。 さらに、出芽酵母mcm10変異体の表現型について検討した結果、温度感受性デグロン株はG1期からS期への移行に関して野生型との間に違いは認められなかったが、mcm10-1は非許容温度下でS期に進行出来ない事が確認された。 2. 出芽酵母Mcm10との相互作用因子の探索 2.1 Mcm2-7とMcm10との相互作用について精製タンパクを用いて検討した結果Mcm6と直接結合することが明らかになった。 2.2 出芽酵母Ctf4、Po1α、GINS間の相互作用について精製タンパク質を用いて検討した結果、Polα-Ctf4、Ctf4-GINSの直接的な結合が検出された。また、Po1α-GINS間の結合はCtf4依存であることが示された。 2.3 出芽酵母Mcm10とPolαとの相互作用を精製タンパク質を用いて検討した結果、出芽酵母酵母Mcm10とPolαとは直接相互作用している事が明らかになった。
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