本研究は、マウス雌性生殖細胞におけるミトコンドリア品質管理とオートファージーの関連を探るものである。本研究では、その検証のために、Zp3Creリコンビナーゼによる、卵母細胞特異的Atg 7 KOマウスを作製したが、このマウスにおいてΔmtDNAの加齢に伴う変化は野生型のそれと同じものであった。これはZp3の発現時期が排卵の直前に限られていることによると仮定し、Zp3発現以前の段階でAtg7欠損を誘導する必要が生じた。このための適当なCreリコンビナーゼ系統マウスを有していなかったため、Atg7ヘテロ欠損の雌雄マウス交配によって得られるAtg7KOマウス胎児より、未成熟卵巣を採取し、それをレシピエントマウス卵巣中で培養し、ΔmtDNAの特異的排除を観察することとした。その結果、Atg7KO卵巣におけるΔmtDNAの減少速度は、ヘテロ、又は、野生型の卵巣のものより遅いことが示唆された。しかし移植卵巣数、また得られた卵母細胞数は十分とはいえず、明確な結論を導き出すには、より多くの検体数が必要だど考えられる。 マウス胎児卵巣の体外培養系におけるオートファジー阻害剤添加実験については、卵巣の体外培養を長期間行うことが困難であり、数週間単位での短い期間ではΔmtDNAの増減を観察することはできなかった。今後はより安定した長時間にわたる卵巣の体外培養法の確立が必要だとかんがえられる。
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