研究概要 |
平成21-22年度の研究目的は、鞭毛内で機能する、ダイニンを含むレドックス調節の分子的実態、とりわけダイニン軽鎖LC3,LC5のレドックス反応における基質を、鞭毛研究のモデル生物であるクラミドモナスを用いて明らかにすることであった。 実施計画通り、基質タンパク質をトラップするための変異を導入したLC3,LC5を発現するクラミドモナス形質転換株の作成に成功した。しかし、変異型LC3,LC5の発現量が極端に少ないことから、同定に足るだけのタンパク質量を得るまでに至っていない。現在、微量精製を繰り返すことでそれに足る量の取得を目指している。 一方、この研究の過程で、新たに2つの知見を得た。1つは、膜透過性酸化・還元薬剤処理細胞の行動観察により、クラミドモナスの走光性の符号(正か負か)がレドックスで調節されていることを発見した。細胞が光に向かうか逃げるかを決める切り替え機構は長い間謎であったが、本研究により初めてそれが、光合成活性などで変化する細胞内レドックス状態で調節されていることが見出された。この知見については現在論文を投稿中である。2つ目に、撹拌された培養液中の細胞の鞭毛打頻度がカルシウム依存的に上昇するという新奇の現象を見出した。その後の詳しい研究により、ずり応力によって機械刺激チャネルと電位依存性カルシウムチャネルが連動し、鞭毛内カルシウム濃度が10^<-7>M程度に上昇することで外腕ダイニン活性が上昇することがわかった。この成果を論文にまとめ、Cell Motility and the Cytoskeleton誌に受理された。
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