細胞内で合成される種々のタンパク質をそれぞれ機能すべき目的地に運ぶ細胞内タンパク質輸送システムは、時間的にも空間的にも高度に制御されている。オルガネラや細胞膜を構成するタンパク質群および分泌タンパク質群は小胞体で合成され、そこから出芽する輸送小胞によってゴルジ体を経由して他のオルガネラや細胞膜に運ばれる。この小胞体は静的なオルガネラではなく形態をダイナミックに変化させるがこの制御機構の多くは不明である。小胞体の動的変化とともに、そこに局在するタンパク質群のダイナミクスも時空間的に変化することが考えられる。本研究では、出芽酵母の輸送小胞の形成に関わる小胞体膜タンパク質の細胞周期進行にともなう時間的空間的なダイナミクスや相互作用変化を明らかにしていく。 輸送小胞の形成に関わる小胞体膜タンパク質であるSar1p、Sec12pをフォトアクチベーションできる蛍光タンパク質Dronpaに融合した融合タンパク質を作製した。Sar1p-Dronpa、Sec12p-Dronpaを退色させた後、母細胞または娘細胞の小胞体でPhotoactivationさせ、蛍光を経時測定して母細胞と娘細胞の小胞体上での拡散を比較した。その結果、Sec12p、Sec61pの拡散は、母細胞、娘細胞で変わらないが、Sar1pの拡散は娘細胞で優位に遅くなることが明らかになった。次に細胞周期の進行によるこれらの拡散速度の変化を解析した。すると娘細胞が母細胞と同サイズに成長するとSar1pの拡散は母細胞と同程度まで速くなった。この結果から、Sar1pの拡散が細胞周期進行によって調節されていることが判明した。
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