現所属研究室において共同研究として行っそきた分裂酵母ローカリゾーム-約5000の全ORF(open reading frame)のクローニングおよびYFP(yellow fluorescent protein)融合ORF発現ライブラリーの作製と、野生株における全遺伝子産物の局在決定-が終了した。完成したローカリゾームを利用して、タンパク質核外輸送担体Crm1の阻害剤であるレプトマイシンB(LMB)の作用によって細胞内局在が変化するタンパク質の検出を試みたところ、通常Crm1による核外輸送を受けていると考えられる約300個のタンパク質を一度に同定することに成功した。しかしさらに興味深いことに、LMBによりタンパク質核外輸送が阻害されると、間期の核内で伸張する異常な微小管束が形成されてしまうという意外な事実を見出した。この発見を基に、本研究では、核・細胞質問輸送の重要性に着目することにより、新たな側面から微小管制御メカニズムを解明することを目指している。今年度は、LMB処理後に形成される核内微小管が間期SPB(spiridle pole body、動物細胞の中心体に相当)に依存して形成されること、間期の細胞質微小管がチューブリンの核外輸送と核表面のiMTOCs(iinterphase microtubule organizing centers)の機能が連携することによって効率的に形成されること、紡錘体形成に関わる微小管結合タンパク賃が間期には核外に排出され、分裂期になると核内に移行して紡錘体に局在化する可能性があることを明ちかにした。本研究により、核-細胞質間輸送の新たな役割が示されると共に、微小管調節機構の解明が進展することが期待される。
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