研究課題
分裂酵母をモデル生物として、細胞周期静止期(GO期)におけるユビキチン/プロテアソーム経路の必須機能、特に核恒常性維持における機能に関して探求した。これまでの研究から、静止期においてプロテアソームを阻害すると、(1)核内構造の顕著な異常、(2)細胞質と核への酸化ストレスの蓄積、(3)ミトコンドリアの顕著な減少、という興味深い表現型をともなって致死となる。これらのうち(1)と(2)は静止期においてプロテアソーム系が核の恒常性維持に関わっている事を示唆するものであって、また、細胞増殖期では認められない表現型である事から、静止期細胞の長期生存の維持におけるタンパク質分解系の必須機能の解明への糸口となると思われた。また、(3)のミトコンドリアの減少という興味深い現象は、ミトコンドリアがエネルギー生産の中心であり、その副産物として酸化ストレスを発生するオルガネラであることを考えると、(2)の酸化ストレスの蓄積と深い関連がある事が予想された。静止期におけるミトコンドリアの大規模な減少はオートファジーによるものであり、ミトコンドリア分解の阻害は静止期細胞の生存期間を著しく減少させた。プロテアソームの失活はミトコンドリアのなんらかの異常を引き起こすと考えられる。そのような条件では酸化ストレス産生が充進するため、ミトコンドリアをオートファジーによって処理し、致死的な酸化ストレスの蓄積を防止する機構が存在するらしい。プロテアソームの異常がミトコンドリアの異常を引き起こす原因が重要であって今後の課題と言える。ミトコンドリアそのものに直接プロテアソーム系が作用しているというのが最も単純な仮説であるが、プロテアソームによる核の恒常性の維持がミトコンドリアの正常な機能を保つ為に重要となる可能性も十分に考えられる。
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Proceedings of the National Academy of Sciences 108
ページ: 3540-3545
Autophagy誌掲載確定
細胞工学 29
ページ: 429-430