本研究では、多能性関連分子Oct3/4が制御するマウス始原生殖細胞の分化決定システムの解明を目的とし、分化決定期に始原生殖細胞で発現を開始する分子の機能解析を行っている。現在、スクリーニングによって同定された候補遺伝子の中から、Oct3/4またはOct3/4と複合体を形成するSox2によって直接発現制御を受ける事が明らかになっている、Rest遺伝子とPL3-C6遺伝子(未知の遺伝子)の二つに絞って、遺伝子欠損マウスの作製を目指して取り組んでいる。 本年度、Rest遺伝子とPL3-C6遺伝子の、始原生殖細胞特異的な遺伝子欠損マウスの作製を行うために、当該遺伝子に対するターゲティングベクターの作製ならびに、それを用いた相同組み替えES細胞の作製・同定を完了させ、現在、複数ラインのキメラマウスの作製を行っている。各相同組み替えES細胞は、最終的にサザン解析による確認実験を行っており、信頼性は確保されている。ES細胞における、相同組み替えに必要なターゲティングベクターの作製には、BAC recombineeringシステムを用いた。当研究室ではこのシステムを導入し、BACDNAから正確且つ迅速に、目的遺伝子の相同領域をクローニングすることを可能にしている。また、始原生殖細胞特異的な候補遺伝子欠損マウス胚の作製を目指しているので、Cre-loxPシステムの利用が可能なベクターを用いて、ターゲティングベクターを作製した。
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