研究概要 |
尾索動物ホヤ幼生の中枢神経系は脊椎動物の脳神経系の基本設計を備えているが、わずか100個程度という非常に少数の細胞から構成されている。ホヤ幼生を用いれば、脊椎動物の中枢神経系の神経回路網とニューロンの機能を細胞一つ一つのレベルにまで掘り下げて解明することが可能である。本研究課題hは神経系を構成する細胞数の少なさに着目し、ホヤ幼生に存在する全てのニューロンの機能を解明することを目標にしている。本年度はホヤ幼生の中枢神経回路網の解析とニューロンの機能解析を目標としたGal4-UASシステムの構築を行った。 ホヤ幼生の各種神経伝達物質作動性ニューロン(グルタミン酸、GABA/グリシン、アセチルコリン、ドーパミン、あニューロペプチド)において、蛍光タンパク質Kaedeを発現するトランスジェニック系統を作製した。これらの系あ用いてニューロンの可視化を行い、個々のニューロンによって構成される神経回路網を細胞レベルで明らかにした。 各種神経伝達物質作動性ニューロンでGal4を発現するトランスジェニック系統を作製した。UAS=GFP系統とのダブルトランスジェニック系統を作製し、Gal4-UASシステムがホヤにおいても利用可能であることを確認した。細胞毒素であるテタヌス毒素、光によりニューロンの活動を興奮させることができるチャネルロドプシン(ChR2),ChR2とは異なる波長でニューロンの活動を抑制することができるハロロドプシン(NpHR)がホヤ幼生のニューロンの機能解析に利用可能であることを明らかにした。今後はこれらの外来遺伝子を発現するUAS系統を作製し、Gal4系統と掛け合わせ、ニューロンの機能解析を行う。
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