脊椎動物のからだには、肋骨や四肢などに代表されるように前後軸に沿った特徴的な形態がみられる。このような前後軸の位置による形態の違いは、発生過程において確立される特異性によってもたらされ、ショウジョウバエの遺伝学的解析を端尾とした研究から、Hox遺伝子群がこの過程において中心的な役割を果たすことが知られている。ショウジョウバエおよび脊椎動物におけるHox遺伝子群がこのようなパターンを形成し前後軸に沿ったアイデンティティーを決めていることはこれまでの多くの研究結果から支持されているが、脊椎動物の胚発生において、この秩序だった発現パターンがどのようにして形成されるのかに関しては殆ど分かっていない。本研究では、2つの蛍光タンパク質で、Hox遺伝子の発現パターンを可視化した組換えゼブラフィッシュを用いて、突然変異体スクリーニングにより、Hox遺伝子の発現異常を示す変異体を単離することを第一の目標としている。今年度は、研究計画に従って、ゼブラフィッシュのHox遺伝子座を含むBACを購入し、SW109大腸菌を利用し、2つのHox遺伝子の制御下に蛍光タンパク質をコードする2種類の遺伝子(EGFR tdTomato)をそれぞれ相同組み換えにより導入した。現在、改変したBACをゼブラフィッシュ胚に導入し、導入された魚をスクリーニングしている。その一方、遺伝子導入魚を作製する間に、野生型個体および所属する研究室にある脳領域をGFPで可視化された組換え魚に対して変異原処理を行った。これらに関しては雑種第2代(F2)が成魚に育ちつつあることから、まもなく変異体スクリーニングの段階に移行できると考えられる。また、Hox遺伝子の発現パタンを可視化した組換えゼブラフィッシュが得られた場合、遺伝子導入魚に対する変異原処理も引き続いて行う予定である。
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