本研究課題では、マウス胎生中期のAGM領域より見出したCD45^<low>c-Kit^+細胞について、高い造血能を持つ細胞集団の選択、in vivoでの長期造血再建能の検討、発生の経過に伴う分布の変化を検討し、さらに胎仔肝臓などの他の造血器における役割を明らかすることを目的とする。以下に本年度の結果を報告する。 (1)GFPトランスジェニックマウスより得たAGM領域由来のCD45^<low>c-Kit^+細胞をストローマ細胞で培養すると顆粒球およびマクロファージに分化することを示した。さらに、血管内皮細胞を誘導する液性因子存在かでは、血管内皮細胞のマーカーを発現するシート状の細胞を得た。このことより、CD45^<low>c-Kit^+細胞が血球および血管内皮細胞への分化能を持つことが示唆される。 (2)胎生10.5日目から15.5日目まで1日ごとのマウス胎盤について、OP9ストローマ細胞上での敷石状コロニー形成能および半固形培地におけるコロニー形成能を指標に造血活性を解析したところ、調べたいずれの胎生時期においても、CD45陽性かつc-Kit陽性の細胞集団に造血活性が認められた。CD45陽性c-Kit陰性細胞集団、CD45陰性c-Kit陽性細胞集団、CD45陰性c-Kit陰性細胞集団には造血活性は殆ど検出されなかった。また、成体造血幹細胞が濃縮される細胞集団として知られているHoechst33342色素排出性のSP細胞集団は、CD45陽性c-Kit陽性細胞集団中に最も高い割合で観察された。胎盤は胎児側組織と母体側組織が入り組んでいるが、GFPトランスジェニックマウスの利用により、胎児由来細胞をGFP標識することを可能にした。 (3)in vitroで造血能が高い胎生11.5日胚AGM領域由来のCD45^<low>c-Kit^+細胞について、さらに詳細な解析を行うために、マイクロアレイを用いてCD45^<low>c-Kit^+細胞と比較として造血活性の低いCD45^-c-Kit^+細胞について、発現プロファイルの解析を行った。その結果、CD45^<low>c-Kit^+細胞で発現が上昇および低下している遺伝子について、さらにその役割を検討するために現在解析を進めている。
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