研究課題
前年度までに、生後の脳室壁のライブイメージングおよび各発生段階における固定標本を観察することにより、上衣細胞の基底小体が細胞内で前側に局在するという新しい平面極性の特徴を示すことを明らかにした。本年度はこの平面極性を制御する分子メカニズムを検討した。まず様々な組織で平面極性を制御することが知られているWnt/PCPシグナル経路の関与を検討した。Wnt/PCPシグナル経路は上衣細胞繊毛の運動方向の決定に重要であることが知られている。PCPシグナルの中心的なアダプター分子であるDishevelledのドミナントネガティブ型変異体を分化中の上衣細胞に導入したところ、繊毛の方向に乱れを生じたが、基底小体の前方への局在は影響を受けなかった。次に非筋細胞ミオシンIIに着目した。非筋細胞ミオシンIIは細胞内モーター蛋白質で、細胞の形態・運動を制御することが知られており、最近では内耳有毛細胞の平面細胞極性を制御することが報告されている。上衣細胞の分化時に、非筋細胞ミオシンIIの活性を阻害剤によって阻害したところ、基底小体の細胞アピカル面での分布が異常になった。また、このときの繊毛運動を観察したところ、正常な運動がみられた。さらに、RNA干渉法によって非筋細胞ミオシンIIを阻害したところ、基底小体の前方への局在が有意に減少した。これらのことから、上衣細胞繊毛の基底小体の前方局在には非筋細胞ミオシンIIの細胞自律的な機能が必要であることが明らかになった。また、繊毛の運動方向と基底小体の前方への局在という2種類の平面極性は、独立的な制御を受けている可能性が示された。
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