研究概要 |
中枢神経系の神経回路網の特徴の一つとして、由来の入力線維が,標的細胞樹状突起の異なる部位に限局して接続することが挙げられる。このような神経接続様式は、その神経回路の機能を理解する上でも重要であり、その分子機構の解明は、神経回路の機能の解明と関連する。既に、海馬神経回路をモデル系として、軸索誘導分子Sema6Aとその受容体plexin-A2, plexin-A4が、歯状回顆粒細胞の軸索接続を制御していることを報告している。当年度、Sema6Aおよびplexin-A4変異マウスにおいて、海馬神経回路を構成するmossy cellの部位特異的な軸索投射に異常が生じていることを見出した。この結果は、標的細胞樹状突起への部位特異的な投射制御に、Sema6A/plexin-A4シグナリングが共通して利用されていることを示唆しており、他の脳領域における類似した神経回路形成の研究を進展させうるとともに、これらの変異マウスは、それぞれの神経回路の機能の解析をする際の良いモデルマウスとなり得る。一方、plexin-A2の樹状突起への局在機構を解明するために、plexin-A2の各種ドメイン欠損組換えタンパク質を用いて解析を行い、局在に必要な領域を同定しつつある。さらに、海馬歯状回顆粒細胞の細胞層の配置異常を示すplexin-A2変異体について、その異常が生じる時期について解析したところ、層構造形成後期において既に異常が生じていることを明らかにした。この結果は、plexin-A2が細胞層の維持よりも形成過程を制御していることを示唆する。
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