減数分裂期における相同的遺伝子組換えは、遺伝情報の多様性を生み出すために重要なプロセスである。その際、性染色体は相同性の少ない部分で対合するが、不対合な部分はヘテロクロマチン化し、XY体という特殊な核内構造を形成する。我々はポリコーム群タンパク質複合体がXY体形成の維持に寄与していることを明らかにしてきたが、更にその分子機構を明らかにする目的で、ポリコーム群タンパク質に結合し精巣に強発現するタンパク質としてTopors(Topoisomerase I and p53 binding RING finger protein)を同定した。生体内における機能を解析するため、Topors遺伝子欠損マウスを作製したところ、雄は不妊である事がわかった。更に詳細に調べるために精巣切片を観察してみると、成熱した精子は形成されており、IVF(体外受精)をした受精卵を野生型雌に移植すると子供が作る事ができた。これらの結果から精製形成過程そのものよりは、精子の運動能もしくは生殖行為に問題があると予想される。現在、精子の運動能の検討、及び生殖行為を起こさせるホルモン量の測定などを行っているところである。Topors遺伝子欠損マウスの表現型の解析から、マウスの精子形成過程において、ToporsはXY体形成への寄与とはまた別に、重要な機能があることが示唆された。今後、更なる表現型の解析を行い、作用機序を解明して行きたい。
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