研究概要 |
生殖細胞は次世代の個体発牛を保証することで,生命の連続性を維持し,かつ生物多様性及び進化を産み出すことができる唯一の細胞である.しかしながら,生殖細胞がどのような分子機構を駆使して分化全能性を獲得するのかについては未だ不明な点が多い.研究代表者は,精子・卵子の起源である始原生殖細胞における後生的遺伝子修飾(エピゲノム)動態を解析により,生殖細胞特異的なエピゲノム変動(DNA,H3K9me2の脱メチル化及びH3K27me3の高メチル化)が誘導されるとを明ちかにしてきた.このような現象は,生殖細胞による分化全能性獲得機構を潜在的に保証する可能性を秘めている.そこで,始原生殖細胞特異的なヒストンメチル化変化を制御する分子基盤を同定するだめに,ヒストシメチル化酵素の機能ドメインであるPR/SETドメインを指標とした発現スクリーニングを行った.その結果,始原生殖細胞特異的に発現する機能未知の分子Prdm14を同定することに成功した.次に,Prdm14遺伝子の機能解析を行うために,Prdm14ノックアウトマウスを作製した.Prdm14ノックアウトマウスは外見上全く正常であったが,始原生殖細胞の分化不全が原因で雌雄ともに完全に不妊であった.Blimpl及びPrdml4は転写制活性を持つことから,始原生殖細胞特異的に起こるエピゲノム制御因子の発現抑制に関与しているか否かの検証を行った.その結果,BlimplびPrdm14がそれぞれ単独でDnmt3bの転写を抑制する活性を持つことが明らかとなった,また,Blimpl,Prdm14が作用するシスエレメントの同定に成功し,今後そのジスェレメジト欠損マウスを作製することで,始原生殖細胞特異的なDnmt3bの発現抑制の生物学的重要性が解明されることが期待できる.
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