研究概要 |
1. ペルー、パコパンパ遺跡から出土した人骨の研究 パコパンパ遺跡は, ペルーの北部高地に位置する形成期の祭祀遺跡であり, 2005-2008年度の調査で人骨が発掘された。本研究の目的は, パコパンパ遺跡から出土した人骨を調査し, 最小個体数・性別・死亡年齢の推定をすること, 形態的特徴や骨病変の観察を行うこと, 骨に残された証拠から古代アンデスの人々の生と死の様相を復元することである。墓地埋葬人骨と散乱人骨の両者の最小個体数は18体であり, 年齢構成は, 8体が未成年, 8体が成人, 1体は10〜20歳代, 1体は不明であった。8体の成人のうち, 性別判定ができた7体の男女比は3:4であった。古病理学的な所見としては, 散乱人骨には永久歯162本中3本(1.9%)に齲蝕がある一方, 墓地埋葬人骨は30本中15本(50.0%)に認められた。 2. 新手法に基づく古人骨の人口学的研究 オホーツク文化は、5世紀から13世紀に北海道・サハリンに展開し、海獣狩猟や漁労を生業とした文化である。本研究の資料は、北海道のオホーツク文化に属する7遺跡から出土した成人人骨91体の腸骨耳状面である。耳状面の観察は、Buckberry and Chamberlainの方法にしたがい、ベイズ法に基づく新手法からオホーツク文化人の死亡年齢分布を求めた。その結果、オホーツク文化人は55歳以上の個体が全体の25%の割合を占め、高齢者を少なく見積る傾向にあった従来の古人口学の推定と異なる知見が得られた。
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