睡眠覚醒リズムに付随して変動する光環境が睡眠、精神生理及び認知心理学的側面に及ぼす影響を検討した。対象及び方法 : 導入観察期(6日間)の評価で不規則な睡眠覚醒パターンが認められた若年成人男性14名(平均年齢22.1歳)に対して、毎日定刻に就寝起床してもらい光環境を整えた後(6日間の睡眠統制)、再び自由睡眠に戻して生活させた(6日間、6ヶ月間)。全期間を通して、睡眠・覚醒状態(アクトグラフ)を1分間隔で連続測定し、毎就寝・起床時には睡眠調査票を記載した。導入観察期間、睡眠統制及び自由睡眠終了翌日の日中に心拍変動測定、心理検査及び認知検査を実施した。結果及び考察 : 毎日定刻に就寝起床し光環境を規則化すると、不規則な生活を送る場合と比べて日中の副交感神経活動と負の感情(緊張・不安・怒り・疲労)が有意に低下した。認知機能(記憶・聴覚的及び視覚的注意機能・実行機能)と睡眠には差は認められなかった。睡眠障害を有さない若年成人男性を対象にしたことが原因だと考えられるが、今後の検討課題である。本研究から、不規則な睡眠にて作られる日々変動する光環境を睡眠統制にて固定させることは、日中の自律神経活動や気分を正常化させる上で有効であることが示唆された。この作用は強化された光同調因子が概日振動体を増強させたことを介して得られたものだと想定しているが現在のところ不明であり、作用機序の特定や生体の各機能と関連する光環境因子(光照射の時間帯や変動幅、照度)の同定が今後の課題である。
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