[目的] 本研究の目的は、コムギの春化要求性(春播型・秋播型)を決定する春播性遺伝子Vrn-D5(現在はVrn-D4に改名、以降Vrn-D4)をマップベース・クローニングすることであり、それによってVrn-1のみに頼っている現在の春播型品種の育種に新たな可能性を開くことである。 【前年度までの状況】 TD(F)(Vrn-D4保有)x早小麦(Vrn-D4非保有)のF_2集団258個体及びF_3系統を用いて分離分析を行い、Vrn-D4が5D染色体動原体近傍のSSRマーカーXcfd78(短腕に座乗)とXbarc205(長腕に座乗)に挟まれた1.8cM領域に座乗し、Xcfd167(長腕に座乗)及びESTマーカーXBG313707(短腕に座乗)と共分離することを明らかにした。 【本年度の研究成果】 本年度は、新たにF_2集団368個体を用いて春化要求性に関する分離分析を行うとともに、上述の4マーカーについて遺伝子型を決定した。その結果、Vrn-D4とXcfd78、Xbarc205の間で組み換えが生じた48個体が見出されたので、これらについてXcfd67及びXBG313707の遺伝子型を解析したが、両マーカーとVrn-D4の間で組換えが起きた個体は存在しなかった。そこで、さらにF_2集団476個体を展開し、同様の解析を進めているところである。 また、5D染色体のESTマーカー地図情報を基に、Vrn-D4座乗領域(Xcfd78どXbarc205に挟まれた領域)を解析したところ、Vrn-D4の有力な候補遺伝子が存在することが明らかになった。現在は、この候補遺伝子のシーケンス解析を行っているところである。
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