研究課題
イネの開花時期(出穂期)は品種の地域適応性を決定する重要な農業形質であり、出穂期遺伝子の組み合わせが育成品種の地域ごとの出穂特性を決めていると考えられる。日本晴とコシヒカリから見出された新規の出穂期QTL(Hd16およびHd17)の遺伝子単離を進めるために、戻し交雑後代の約3,000個体について、Hd16候補領域内で組換えが生じている65個体を選抜し出穂期の後代検定を行った。さらにコシヒカリBACライブラリーからこの領域をカバーする5つのBACクローンを選抜して塩基配列を解読し、日本晴とコシヒカリ間で42個の挿入欠失変異(Inde1)や一塩基置換(SNP)を検出した。これらの多型をDNAマーカー化し組み換え個体を解析するとともに後代検定の結果と合わせることによって、Hd16の候補領域を321kbに絞り込んだ。Hd16の候補領域内で日本晴とコシヒカリ間で非同義置換を起こす変異は1ヶ所だけであり、この変異を含む遺伝子がHd16の候補と考えられた。また、Hd17の候補ゲノム領域をカバーするコシヒカリBACクローンを選抜し、塩基配列を解読した。塩基配列情報を利用し新たなDNAマーカーを作成して、さらに候補ゲノム領域を限定した。その結果、Hd17の候補ゲノム領域は76.7kbに絞り込まれた。この候補領域内には18ヵ所のSNPまたはIndelが存在し、RAP2で予測された9個のORFsのうち3個のORFs内に多型が生じていた。Hd16およびHd17について、農業生物資源研究所が所有する約5万系統のTos17変異体パネルをスクリーニングしたが、候補遺伝子の変異体は検出できなかった。Hd16についてはさらに農業生物資源研究所が所有する炭素イオンビーム照射変異体パネル(約1万4千個体)からスクリーニングしたが、候補遺伝子の変異体は検出できなかった。
すべて 2008
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Theoretical and Applied Genetics 117
ページ: 935-945