イネの開花時期(出穂期)は品種の地域適応性を決定する重要な農業形質であり、出穂期遺伝子の組み合わせが育成品種の地域ごとの出穂特性を決めていると考えられる。日本晴とコシヒカリから見出された新規の出穂期QTL(Hd16およびHd17)の遺伝子単離を進あるために、Hd16の候補遺伝子を含む約10.7kbpの日本晴ゲノム断片を導入したコシヒカリの形質転換体を作出した。T_0世代の形質転換体は短日条件下で出穂が促進し、長日条件下で出穂が遅延した。日本晴のT_0世代のRNAi形質転換体は短日条件下で出穂期が遅延し、長日条件下で出穂期が促進した。これらの結果から、候補遺伝子がHd16であると証明できた。現在作出した形質転換体についてT_1世代における後代検定を進めている。Hd16と他の出穂期遺伝子を異なるアリル組み合わせで持つ置換系統群について出穂調査を行い、Hd16とHd1およびHd6の組み合わせでは出穂期が相加的に変化し、Hd16とHd2の組み合わせではHd2が機能欠損型になるとHd16の効果の差が見えなくなった。従って、Hd16とHd2の間には遺伝的な相互作用が存在すると考えられた。また、Hd17に関しては、連鎖解析によって候補ゲノム領域をさらに隈定できた。候補ゲノム領域中の2つの予測遺伝子についてRNAi形質転換体を作出して機能証明に取り組んだが、候補遺伝子特異的な発現抑制個体を作出できなかった。
|