重イオンビーム照射技術の更なる効率化のため、線エネルギー付与(LET)や植物の状態が変異誘発に与える影響を調査する。本課題では、照射当代で変異選抜ができる植物Y染色体を標的として突然変異を検出する。 ヒロハノマンテマY染色体変異誘発の高率化・雌雄異株植物ヒロハノマンテマ吸水種子に対する生存曲線を求め、Cイオンビーム(LET=22.5keV/μm)とFeイオンビーム(LET=640keV/μm)の適正線量がそれぞれ4Gy、10Gyであることを明らかにした。Cイオンビーム照射区から無性花変異体3個体と両性花変異体1個体を、Feイオンビーム照射区から両性花変異体を1個体得た。しかし、吸水種子照射では、乾燥種子照射にくらべてキメラ変異の程度が強く、性転換変異体の固定が困難であった。現在、花粉照射の条件検討を進めている。 パパイアのY染色体変異誘発の高率化ゲノム解読が進んでいるパパイアのY染色体の変異誘発を行った。乾燥種子にCイオンビームを段階照射し、適正線量が100Gyであることを明らかにした。効率的に選抜を行うため、照射個体は発芽後Y染色体マーカーを用いてPCRを行い、Y染色体をもつ個体のみを栽培した。現在、変異体選抜を進めている。 Y染色体による性発現制御機構の研究 : ヒロバノマンテマのSUPERMANホモログS1SUPがメス特異的に発現することを発見した。S1SUPをシロイヌナズナで過剰発現させると雄蕊(♂)の伸長が抑制され雌花様の形態を示した。Y染色体がS1SUP発現を制御してオス化するというモデルが示唆された。
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